小児科ブログ

米国留学

2024/11/27

こんにちは、松永真由美です。
前回は、アメリカの紹介をさせていただきました。あのブログだけでは、ただアメリカで暮らしてきた人になってしまいますので、今回はそもそも何をしに行ったのかをお話しします。

始まりは国内留学でした。私はアレルギーを専攻しており、国内で最先端の診療をしている病院のひとつである、国立病院機構三重病院で2年間勉強してきました。そこでは臨床研究(患者さんのデータ、治療の経過等を検討するもの)を中心に行っており、多くの研究に携わらせていただきました。国内留学が折り返しを迎えた頃に、かつてMayo Clinicで基礎研究(細胞やマウスを使ったもの)をされていた三重病院の院長(現名誉院長)である藤澤隆夫先生からお話をいただき、Mayo Clinicに留学する運びとなりました。「留学」と聞くと、「すごいね」「優秀だね」と声をかけてくださる方がいて恐縮ですが、残念ながら私が特別優秀だったわけではなく、全員に声をかけた結果、ポジティブな返事をしたのが私だけだったのだと思います。今となっては懐かしい話ですが、当時はコロナ禍で海外ではロックダウンになっている地域もあったので、よく行く決意をしたなぁと我ながら思います。

Mayo Clinicで私が所属したKita Labはアレルギー・免疫学講座であり、気管支喘息や食物アレルギーといった我々にとって身近な疾患の原因・機序の研究をさせていただきました。私はその中でも食物アレルギー、特にピーナッツアレルギーと牛乳アレルギーが、「どんなメカニズムで起こるのだろう?予防はできるの?治療は?」といった内容をマウスを使って研究してきました。もちろん、ヒト(患者さん)を対象にした研究はこれまで経験してきましたが、マウスを扱うのは初めてです。オリエンテーションでマウスの飼育の仕方やマウスの持ち方などを一から学び、ちょろちょろ逃げるマウスと追いかけっこしながら徐々に慣れていきました。実験の手順や解析方法は、同僚や同じ研究室に所属する大学院生を手伝ったり教わったりして学びました。一通り学ぶのに1ヶ月かかってしまったことに焦りつつ、やっと自分の実験を始めたのが2021年の5月でした。麻酔をかけて眠らせたマウスにピーナッツやミルクを塗ったり吸わせたりして感作をさせる(食物アレルギーのきっかけを作る)処置を週1~2回、4週間行い食物アレルギーの症状が出るか、という1ヶ月単位の実験を様々なマウスを使って繰り返しました。マウスの食物アレルギーの症状は、かゆみや元気がなくなるといった行動に表れるのと、体温低下があります。かゆいのはヒトでも見られますが、マウスの場合はもともと毛繕いで自身の身体をこしょこしょ触るのは、最初は毛繕いなのか掻爬行動なのかも区別がつきませんでしたが、実験を重ねるにつれて慣れていき、次の実験ではどんな種類のマウスを使ったらいいのか、どんな結果が起こりうるのか、などを予想しながら行うようになりました。思うような結果が出ないと、1ヶ月無駄だったのかなとがっかりすることもありましたが、無駄な実験などないと信じ、これらの研究の成果を早く論文にして皆様にご報告できるように頑張ります。

こんなことを書いていると、実験詰めの毎日で辛かったのかなと思われるかも知れませんがそうではなく、日本にはないイベントも多々ありました。福利厚生の一環である“Coffee and Chat”という研究棟全体の月1交流会で、自分のラボだけではなく他のラボともおしゃべりをする時間があり友人を作ることができました。創立記念日やクリスマスの時期にはお菓子やジュースが配られたり、ミーティングでは発表の前に雑談タイムがあったりと身内以外と接する機会が多かったのはよかったと思いました。お菓子タイムなどのリフレッシュできるイベントは、日本でも是非導入してほしいですね! このような雑談が英会話を上達させるチャンスです!急に話しかけられたり質問されたりすると恐縮してしまう日本人の我々は、こちらから話しかけてみましょう。文法が間違っていても、途中でつまっても、話したい意思が伝われば向こうの人は拙い英語でも耳を傾けてくれます。逆に質問されてまごまごしていると、「あまり話しかけない方がいいのかな」と思われてしまい、遠慮されてその後も話しかけてもらえることがなくなってしまいます。ルー大柴風(今の若い方はご存知でしょうか??)になったとしても、頑張って話してみるのがいいんだなというのが、この3年間で一番大きな学びです。自分の所属したラボ以外でも友達はたくさんできましたし、Mayo Clinic以外にも目を向けてアクティブに行動することで、それ以外の友達もできました。帰国して半年が経過しましたが、数組の友人が日本旅行に来てくれて、その際に会おうと声をかけてくれました。大人になってからできる友人はとても貴重で、国を超えて交流が持てることを幸せに思います。

いきなり締めに入りますが、この3年間は、交友関係や生活スタイルが変わったのはもちろん、仕事に関する視野が大きくひろがった留学生活でした。臨床の現場しか知らず、私の分野での臨床研究はたくさんの患者さんの協力のもとで長い月日を通して結果がでるかどうか・・・というものでしたが、基礎研究ではひとつの実験が、早いものはその日のうちに、長くても1ヶ月で結果が出ます。次はどうしようかと思考を重ねたり、その結果同士を組み合わせたり、というのが好きな人には基礎研究が向いているかもしれませんね! どちらも経験できて、帰国した今両方続けられる環境を与えていただき感謝しております。何が言いたいかと申しますと、知らない世界に思い切って飛び込むと、思いがけず楽しい人生が待っているかもしれません、ということです。人生100年時代、楽しんで生きていきましょう!
小児科学講座 松永真由美

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