小児科ブログ

迷ったら大変な方を選べ

2022/05/07

今年の桜の季節は曇天が続き、年度替わりの風物詩を楽しむことはあまり出来ませんでした。それでも桜の花を眺めると新しい一年の始まりを感じずにはいられません。そんな中、今年は5名の医局員が新たに仲間入りされました。
 
この時期、新人ドクターから「小児科医として働く上で、どんなことに気をつけたらいいですか?」という質問を受けることが時々あるのですが、敢えて一つ挙げるとすると「迷ったら大変な方を選べ」という言葉でしょうか。恐らく誰もが一度は聞いたことがある言葉だと思います。芸術家の岡本太郎の言葉のようですが、過去の偉人たちも同じような言葉を遺しています。あえて厳しい道に進むことで人生経験が得られ、それが自分の人間性ひいては心の成長に繋がるという意味のようですが、臨床医の道を進む皆様にとっては自分自身の成長だけではなく「医療上のリスク回避」という視点でも役に立つ言葉だと思います。
 
かく言う私の新人時代ですが、迷ったら必ず「大変な方」を選択してきたかというと決してそうではなく、「楽な方」を選んで後悔した経験ばかりで、まさに使えない若手医師の代表でした。よっぽど褒めることがなかったのか、上司にスピーチを依頼した結婚式の披露宴では「新郎の長所を一言で表すと『丈夫で長持ち』です」というお言葉を頂くなど、苦い記憶のオンパレードでした。「大変な方」を選べば絶対間違えることはないという訳ではありませんが、思わしくない結果となってしまったエピソードを振り返ると、瞬間的に「楽な方」や「思い込み」を重視したことが圧倒的に多かったと思います。新人ドクターの皆様には反面教師として学びにつなげて頂ければ有り難いです。
 
物事はタイミングが大事です。特に小児医療では、数分・数時間・数日で状況が刻々と変わります。適切なタイミングを逃さないように、常に先の状況を見据えながら予想し物事を進めることが大切です。1日遅れたことで病状が変わることはよくあります。しかし一方で、診断や治療方針を完璧に決めるための時間や情報が足りないことも現場ではよくあります。判断が難しいことも多いですが、そのような時には「迷ったら大変な方を選べ」という言葉を思い出し、その時々でベストな判断ができるように、やれることは全力で取り組んで下さい。
 
来年の桜の季節には今よりも一回り成長した小児科医として活躍されていることを、心より願っています。
 
小児科学講座 石川貴充

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